工場のリアル、先に言っておく 製造業に入る前に知っておきたいことを、中の人が書く

キャリアと昇進 2026-07-14

工業高校から部品メーカーへ。高卒就職35年目の答え合わせ

答えから言うと、私にとっては正解でした。勉強が嫌いで、消去法みたいに選んだ工業高校と高卒就職。それが35年たって「あれでよかった」と言い切れる結果になっています。ただの自慢話にならないように、運がよかった部分も含めて正直に書きます。

私は1989年に工業高校を卒業して、自動車部品メーカーへ入社しました。工業高校に行こうか迷っている中学生、就職か進学かで迷っている工業高校生、そしてその親御さんに向けた記事です。

勉強が嫌いだから、工業高校を選んだ

かっこいい志望動機はありませんでした。私は勉強が苦手で、嫌いでした。だから高校を出たら就職すると中学の時点で決めていて、「一番就職しやすい」と聞いた工業高校を選びました。それだけです。

ただ、ものづくりは好きでした。中学で好きだった授業は、体育と美術と技術。机の勉強は嫌いでも、手を動かすことは好き。同じタイプの人、いると思います。工業高校は、そういう人間に合う場所でした。

機械科で学んだこと。実はぜんぶ武器になった

私は機械科でした。普通教科のほかに実習の時間があって、内容は今思い出すだけでもこれだけあります。

在学中は、正直ピンと来ていませんでした。でも入社してから分かります。図面が読めて、旋盤が回せて、溶接の基本が分かる状態で現場に入れる。「図面が読めない」は入社してから治るという記事を書きましたが、工業高校卒はそもそも入口でつまずかないんです。

高卒就職の仕組み:学校に来る求人から、成績順

高卒の就職活動は、大学生のような自由応募ではありません。学校に届く求人の中から選び、だいたい成績順に決まっていきます。先生から「お前の成績だとこの辺が受けられるけど、どうする?」と言われる、あの感じです。

私は別の会社を受けるつもりでした。ところがたまたま、今の会社の企業内学園の枠が空いて、先生に言われたんです。「1年勉強して、給料ももらえるぞ」。勉強はしたくなかったですが、いきなり現場に入るよりいいかと、軽い気持ちで受けることにしました。

この「軽い気持ち」が、結果として35年の仕事を決めました。学園で1年学んで試作課に配属され、今に至ります。学園がどういう場所だったかは企業内学園とは何かに書きました。

同級生たちのその後

同級生はほぼ全員就職しました。行き先で一番多かったのは製造業、特に自動車部品の会社です。ほかには公務員になった人、ディーラーの整備士になった人(給料が少ないからと、のちに自動車部品の会社へ転職しました)、別の会社の企業内学園に行った人、親の町工場を継いだ人、大手電力会社に行った人。

大学へ進学したのは、1人だけでした。その彼は卒業後、電線工事の会社に入りました。

大卒をうらやましいと思ったことは、一度もない

「高卒だと、大卒に差をつけられて悔しい思いをするのでは」と聞かれたら、私の答えはこうです。全く感じたことがありません。

それどころか、逆のことが起きました。私たちが就職した1989年は、まだ景気が落ち込む前です。かなり入りやすい時代でした。ところが同い年で大学に行った人たちが就職する4年後には、バブルが崩壊して、大卒の就職はかなり難しくなっていました。

勉強が嫌いだったのが、逆によかったかもしれない。冗談みたいですが、本当の話です。ただしこれは時代の運です。私の実力ではありません。進路の正解は、本人の選択だけでなく、そのときの景気で変わってしまう。それも35年目の正直な答え合わせです。

35年目の答え合わせと、今の工業高校生へ

工業高校から部品メーカーへ。この進路は、私にとっては正解でした。ものづくりが好きな人間が、手に職をつけて、35年安定して働けた。ただ、これはあくまで私の場合で、人それぞれだとも思います。

今の工業高校生に言いたいのは、むしろこっちです。今は転職が普通の時代です。最初の会社が嫌なら、早めに辞めて大丈夫。若いほど雇用されやすいからです。いろいろやって、自分に合う仕事を見つけてください。

私たちの時代は「一度入ったら定年まで」で、最初の就職がほぼ人生の全てでした。今は違います。製造業はどこも人手不足で、工業高校卒は取り合いです。就職に有利な入口に立っていて、しかも間違えてもやり直せる。今の工業高校生は、この2つを両方持っています。入りやすさなら35年前の私たちも同じでしたが、「間違えてもやり直せる」は今の時代ならではの強みです。気負わずに選んでください。

筆者:工業高校卒業後、1989年に自動車部品メーカーへ入社。1年間の企業内学園を経て試作課へ配属。以来、試作品の組み付けから性能測定までを担当。班長を経験したのち、管理職の道ではなくものづくりの現場に残ることを選んだ。 この記事は個人の経験にもとづくものであり、所属企業の見解ではありません。記載の内容は筆者の経験した時代の一例で、現在の高卒就職の制度や状況とは異なる場合があります。 詳しくは書いている人へ。