性能測定とはどんな仕事か。試作の最終工程を35年やっている本人が説明する
性能測定は、試作品が図面どおりの性能を出しているかを数値で確かめる工程です。合格なら納入。外れたら原因究明。得意先の要求値を満たしているかを確認する、重要な工程です。
私は1989年に自動車部品メーカーへ入社し、試作課で試作品の組み付けと性能測定を35年やっています。求人票で「検査・測定業務」と聞くと、部品の受け入れ検査や寸法測定、外観検査を思い浮かべるかもしれません。性能測定はそれとは別物で、完成した製品を実際に動かして、性能そのものを確かめる仕事です。この記事では実際の手順から説明します。
何を測るのか:流量、気密、音、荷重
私が担当している製品の例です。完成品では、図面で指示された圧力や駆動条件をかけて、流量が規定の値になるよう調整します。中身が外に漏れないかを確かめる気密測定、作動音が規格内かの確認もします。
完成してから測るだけではありません。組み付けの途中でも測ります。部品を圧入するときの荷重。圧入した部品が抜ける荷重。溶接部を壊すのに必要な荷重。それぞれが図面の規格内かを確認しながら、組み進めます。
「最後にまとめて検査」ではなく、工程の節目ごとに数字で確かめる仕事だと思ってください。
測定は6ステップで進む
メインで担当している製品の場合、流れはこうです。
- 製品を測定機にセットする
- 測定条件(圧力・駆動条件)をセットする
- 電源を入れる
- 流量を確認する
- データをシートに入力し、合否を判定する
- 合格品を納入する
文字にすると単純に見えます。実際、手順そのものは単純です。この仕事の本当の中身は、規格に入らなかったときに始まります。
製品を測る前に、測定器のほうを疑う
測定の前には、製品マスター(性能が分かっている基準品)を測って、測定器が正しい値を出すことを確かめておきます。
測定器が狂っていたら、良品をNGにしたり、NG品を合格として世に出したりすることになります。だから製品より先に、測定器を疑う。地味な一手間ですが、測定という仕事の信用は、ここで決まります。
性能が出ないとき、何が起きるか
規格に入らなかったら、疑う順番が決まっています。まず測定条件が合っているか。次に、製品そのものに異常がないか、めぼしい箇所から確認します。それでも原因がつかめなければ設計に報告して、対応を一緒に考えます。測って終わりではなく、原因究明までが測定の仕事です。
設計ミスで性能が出ていなかった場合は大ごとです。設計変更になり、部品を単品から手配し直して、一から組み直します。
それで納期に間に合わないときもあります。私は、NG品に追加工して、徹夜で製品を作って納期に間に合わせたことがありました。試作の最終工程には、遅れの逃げ場がないんです。
面白さは「自分で考えて進められる」、きつさは「しわ寄せ」
面白いのは、図面を見て、どうやって作ろうかを自分で考えて進められるところです。苦労して完成したときの充実感は、この仕事を35年続けられた理由でもあります。
きついのは、数としわ寄せです。試作は手作りなので、製作数が多いと体にきます。そして前の工程が遅れると、最終工程の私たちが短納期を背負います。上流の遅れは、最後の工程に集まってくるものです。
意外だが、ものづくりが苦手な人に向いている面がある
組み付けは、やり方をミスると製品そのものを不良品にしてしまいます。性能測定は違います。測定のやり方をミスしても、製品を壊してしまうことは少ない。やり直しがきくんです。
だから、手先の器用さに自信がない人の入口として、測定は悪くない選択です。求められるのは器用さより、規格と数字に対して正直であること。測定値をごまかさない人なら、やっていけます。
試作という仕事の全体像は試作と量産の仕事はどう違う?に、待遇ときつさの本音は自動車部品メーカーはきつい?正社員は割に合うのかに書きました。