50代製造業、転職の現実。35年勤めた現場に、転職する50代はいなかった
50代の転職の現実を、一つの事実からお見せします。私は自動車部品メーカーの現場に35年いますが、周りで50代で転職した正社員を、一人も知りません。
先に断っておくと、私自身は転職を考えたことがない人間です。だから転職のやり方は教えられません。この記事で書けるのは、50代の現場から見えている現実と、なぜみんな動かないのかの正直な中身だけです。ただ、それは転職サイトには書いていない話だと思います。
50代で転職した正社員を、私は知らない
35年で一人だけ、近い話があります。先輩の同期で、独身でお金をそこそこ貯めたから、FXで生きていくと言って辞めた人です。転職というより、会社勤めからの引退でした。それ以外に、50代で会社を移った正社員を思い出せません。
「50代 転職」で検索すると成功談がたくさん出てきます。でも少なくとも私の現場では、それは起きていません。まずこの体感を、現実の出発点にしてください。
非正規は50代でも「転職」させられる
一方で、選ぶ余地なく職場を移る人たちはいました。EVシフトで仕事が減ったとき、切られた派遣の人たちです。そのうちの一人は、次の派遣先が決まらないまま「子供の学費がやばい」と言っていました。その後どうなったかは、分かりません。連絡が来ることも、ないんです。
同じ「50代で職場を移る」でも、正社員と非正規では意味がまるで違います。正社員は動かない自由がある。非正規は動かされる。この差が50代で一番大きくなることは、EV化でエンジン部品の試作が消えた日に書いたとおりです。
なぜ50代の正社員は動かないのか
周りの50代を見ていて、「この歳で転職して新しい仕事をやりたい」と言う人はあまりいません。理由は単純で、動かないほうが合理的だからです。
私たちは年功序列の世代なので、給料はそこそこもらえています。長くいるぶん、周りに気を使うことも少ないポジションです。そこへ住宅ローンと子供の学費が重なります。私自身、ローンは60歳まであります。この状態で会社を移って、給料が下がって、人間関係を一から作り直す。やる理由が見つからないんです。
「50代は転職する勇気がない」と言われることがありますが、現場の実感は違います。勇気の問題ではなく、損得勘定の答えが「残る」になる構造なんです。
私の技能は外で通用するか。正直な自己評価
では、仮に今、会社を出ることになったら。旋盤もフライスも使えて、治具を設計して作れて、性能測定までできる。同じような部品メーカーなら、多少はやれると思います。
ただ、そんなに甘くないだろうとも思っています。35年同じ会社のやり方に馴染んだ人間が、よその会社で同じ給料をもらえるのか。50代の体で、新しい職場のペースについていけるのか。自信を持って「大丈夫」とは言えません。転職を考えたことがない人間の想像には、限界があります。そこも正直に書いておきます。
それでも言えるのは「勝負は50代になる前」
50代の転職は相当難しい。それでも、何らかのスキルがあれば必要とされる職場はあるはずです。製造業はどこも人手不足ですから、旋盤が回せる、溶接ができる、図面が読める。手に職は、年齢をある程度カバーします。
だから若い読者には、こう言いたい。50代の転職の成否は、50代になってから決まるのではありません。40代までに「外でも通用するもの」を積んだかどうかで、ほぼ決まっています。辞めたいのは甘えかの記事にも書きましたが、これからはスキルをつけないと生き残れない時代です。
同じ50代で迷っている人には、無理に動く必要はない、とも言いたい。残って定年まで勤めて、再雇用で65歳まで働く。この道の現実は体力の限界は何歳かの記事に書きました。ただし、会社の都合で「動かされる」可能性だけは頭に入れて、自分の技能が外でいくらになるのかを知っておく。それは50代でもできる備えです。