工場のリアル、先に言っておく 製造業に入る前に知っておきたいことを、中の人が書く

試作の仕事 2026-07-17

工場で不良品を出したらどうなるか。35年の現場から「やらかし」のリアルを書く

不良品を出しても、終わりではありません。すぐ報告すれば責められない仕組みがあり、怒られないちゃんとした理由もあります。35年やってきた私自身、やらかしは一通り経験しました。この記事ではその実例ごと、不良を出したあとに何が起きるかを書きます。

私は1989年に自動車部品メーカーへ入社し、試作課に35年います。「ミスしたらどうなるんだろう」と不安な就活生や新人に向けた記事です。

不良を出したら、まずすぐ職制に報告する

不良を出したときの動きは決まっています。まず、すぐに職制(現場の管理職)へ報告します。ここが全ての起点です。

次に技術部門へ連絡して、その不良が許容できるものかを確認します。許容できなければ、修正できるものは修正する。修正できない、または修正しても品質が保証できないと判断されたものは、部品を手配し直して作り直します。

そのあとに、不具合報告書を書きます。中身は「発生状況」「発生原因」「処置内容」「再発防止対策」など。それを上司に提出して、一連の流れが終わります。つまり不良への対応は、謝罪ではなく手順なんです。

意外かもしれないが、怒られない

「不良を出したら怒鳴られるのでは」と思うかもしれません。うちの現場では、怒られません。これには、ちゃんとした理屈があります。

部下が不良を出したのは、職制のせい。分かるようになるまで教えなかった、できるようになるまで見ていなかった側の責任だ、という考え方です。私も班長を経験したので、これは建前ではなく本音だと分かります。

真面目にやったうえでのミスなら、評価やボーナスへの影響もないと思います。ちゃんと反省して、次から出さなければいい。報告すれば、責められない。これが現場の実際です。

私のやらかし:指示ミスで全数不良にした話

偉そうに書いてきましたが、私自身のやらかしを白状します。班長のころ、部下に部品の洗浄を指示したときの話です。

その部品は本当は、専用の洗浄パレットに1個ずつ入れて洗浄しなければいけないものでした。ところが部下はまとめて洗浄してしまい、部品どうしがぶつかって傷だらけに。全数不良です。

部下のミスに見えるかもしれません。違います。私が「この人はやり方を知っているはず」と思い込んで、確認せずに指示を出したのが原因です。先ほどの「不良は職制のせい」という理屈を、私は自分のやらかしで学びました。

会社は「人は間違える」前提でできている

もうひとつ、知っておいてほしいことがあります。完成した製品は、そのまま出荷されるわけではありません。検査係がもう一度、性能データ、寸法データ、外観を確認します。そこで不具合が見つかれば、また不具合報告書を書くことになります。

面倒に聞こえますか?逆です。この仕組みがあるから、一人のミスが客先まで行く前に何重にも網にかかる。品質は個人の注意力ではなく、仕組みで守る。工場とはそういう場所です。新人一人の肩に、会社の品質が乗っているわけではありません。

それでも得意先まで流出したら、どうなるか

網をすり抜けて、不良が得意先まで行ってしまうこともあります。そうなると、検査係が得意先用の不具合報告書を書いて提出します。出してしまった班の職制も報告書を書きます。社内で見つかるのとは、重みが一段変わります。

これも白状します。私が組んだ製品が、出荷後に誤品組み付け(指定と違う部品を組んでいた)だと分かったことがあります。検査係の係長が得意先まで出向いて、向こうで組み替えをさせてしまいました。あのときは、本当に申し訳なかったです。

それでも、私はクビにもならず、35年勤め続けています。流出は重い。でも、正直に報告して、手順どおりに対処すれば、人生は終わらないんです。

やってはいけないのは、隠すことだけ

では、不良を隠した人はどうなるのか。実例を書きたいところですが、書けません。35年で、隠した人の記憶がないんです。報告しても責められない仕組みだから、隠す理由がない。よくできていると思います。

裏を返せば、隠すことだけが、この仕組みの外に出る行為です。派遣から正社員になれるのかの記事でも書きましたが、品質異常をごまかさず報告することは、現場の信用のいちばん底にあります。ここを踏み外さなければ、大丈夫です。

最後に、もしあなたが不良を出して落ち込んでいたら、私が現場でかける言葉をそのまま贈ります。誰でもやるから大丈夫!次から気をつけて!

私の他の失敗談(公差の桁の読み間違いなど)は「図面が読めない」は入社してから治るに、検査と測定の仕事の中身は性能測定とはどんな仕事かに書きました。

筆者:工業高校卒業後、1989年に自動車部品メーカーへ入社。1年間の企業内学園を経て試作課へ配属。以来、試作品の組み付けから性能測定までを担当。班長を経験したのち、管理職の道ではなくものづくりの現場に残ることを選んだ。 この記事は個人の経験にもとづくものであり、所属企業の見解ではありません。記載の内容は筆者の勤務先での一例です。 詳しくは書いている人へ。