定年後の再雇用はどんな働き方か。60代の先輩たちを見て分かったこと
再雇用のいちばんの特徴を、先に言います。仕事の中身は何も変わりません。変わるのは給料だけです。昨日まで正社員でやっていた仕事を、今日から安い給料で同じようにやる。これがなかなか受け入れられないと、多くの先輩が言います。
私は1989年に自動車部品メーカーへ入社し、試作課に35年います。まだ定年前ですが、数年後には自分も入る立場です。60代の先輩たちを間近で見て分かったことを、これから製造業で長く働く人に向けて書きます。
仕事は変わらない。給料だけが下がる
再雇用というと、「軽い仕事に回されるんでしょ」と思うかもしれません。少なくともうちの現場では違います。担当する仕事も、任される範囲も、現役時代とまったく同じ。役職の有無で多少変わることはあっても、現場でやることは変わりません。
変わるのは給料です。どれくらい下がるかは、正直、人によって言うことが違って本当のところは分かりません。半分くらいになったという人もいれば、7割くらいという人もいます。ボーナスも出ますが、額は聞いていません。はっきりしているのは、同じ仕事なのに、手取りは確実に減るということだけです。
基本はフルタイム。交渉次第で時短も週何日も
勤務の形は、基本フルタイムです。ただ、会社との交渉しだいで、時短にしたり、週に何日かだけ働いたりしている人もいます。体力や家庭の事情に合わせて、ある程度は融通がきくようです。
60代の体は、人によって差が大きくなります。体力の限界の記事に書いたように、この年代になると体調不良で急に休んだり、入院する人も出てきます。フルタイムで通すか、少しペースを落とすか。選べる余地があるのは、救いだと思います。
それでも、みんな再雇用を選ぶ
給料が下がるのに、なぜ続けるのか。答えははっきりしています。辞めて他のところで働くよりは、雇用延長したほうが絶対にいい。大体の先輩がそう言います。だから、ほとんどの人が再雇用を選びます。
60代で新しい会社に移るのが、どれだけ難しいか。それは50代の転職の記事に書いたとおりです。慣れた職場で、慣れた仕事を、下がったとはいえ安定した給料で続けられる。給料の額だけ見れば不満でも、トータルで考えれば再雇用がいちばん割に合う。60代の現実的な選択が、これです。
働く理由は、お金だけではない
先輩たちに「なぜ働き続けるのか」を聞くと、答えはいろいろでした。
- 「俺は生涯現役だから、仕事は辞めない」
- 「生活できないから辞められない」
- 「家にいても暇だから」
- 「ボケ防止だよ」
- 「年金が出る歳まで、間があるからね」
お金のため、という人もいれば、体と頭のため、時間を持て余さないため、という人もいます。年金が支給される年齢が上がってきたことも、再雇用が当たり前になった理由の一つです。60歳がゴールではなく、その先も5年働くのが普通。これが今の製造業の現実です。
頼られる人と、腐る人に分かれる
同じ再雇用でも、働きぶりは人によってはっきり分かれます。ここが一番、見ていて考えさせられるところです。
一方には、再雇用になっても今までどおり仕事をして、頼りにされる人がいます。大体の先輩はこちらで、現場としては本当に助かっています。もう一方には、「給料が安くなったから、この仕事はやらない」「残業すると損だから」と非協力的になる人が、一定数います。気持ちは分からなくもない。でも、そういう人は、内心みんなから嫌われます。
私が「ああはなりたくない」と思うのは、後者です。給料が下がったことへの不満を、仕事の手抜きで返す。その気持ちが顔に出た瞬間、35年かけて築いた信用が崩れていきます。逆に、再雇用でも淡々と頼られる仕事をする先輩を見ると、あんなふうに歳を取りたいと思います。
今のうちに知っておいてほしいこと
これから製造業で長く働く人に、伝えたいことは一つです。再雇用になると給料は下がる。でも仕事内容は何も変わらない。これを、先に知っておいてください。
知らずにその日を迎えると、「同じ仕事なのに、なんでこの給料なんだ」という不満で、頭がいっぱいになります。それが手抜きや不機嫌になって出て、嫌われる再雇用のできあがりです。でも、下がることを最初から分かっていれば、受け止め方が変わります。心の準備があるかないかで、60代の働き心地はまるで違ってきます。
私自身は、頼りにされる再雇用生活を送りたいと思っています。給料は下がっても、35年の経験は下がりません。それを現場に返せるうちは、返し続けたい。定年は、働き方を一度リセットして考え直す区切りでもあります。今の会社で続けるのか、それとも別の道を探すのか。働き方は人それぞれなので、50代のうちから少し考えておくといいと思います。