工場のリアル、先に言っておく 製造業に入る前に知っておきたいことを、中の人が書く

働き方と転職 2026-07-20

「最近の若いのはすぐ辞める」は本当か。35年見てきた現場の実際

結論から言うと、うちの現場では逆です。今の若い子のほうが、辞めません。この10年で入ってきた11人のうち、辞めたのは1人だけです。「最近の若いのはすぐ辞める」は、少なくとも私の見ている範囲では当てはまりません。

私は1989年に自動車部品メーカーへ入社し、試作課に35年います。若手が辞めるのを見送る側として、実際に何が起きているかを書きます。工場勤務が自分に合うか不安な人の、判断材料になるはずです。

今の若い子は、思っているより辞めない

数字で書きます。ここ10年で私の周りに入ってきた若手は11人。そのうち辞めたのは1人です。10人は今も続けています。世間で言われる「イマドキの若者はすぐ辞める」とは、正反対の光景です。

理由は私にも断言できませんが、今の子はよく考えて会社を選んでいる印象があります。昔より情報が多くて、入る前にある程度「どんな仕事か」を分かって入ってくる。だからギャップで辞めることが少ないのかもしれません。

それでも35年で、12人以上が辞めていった

とはいえ、辞める人がいなかったわけではありません。35年をパッと振り返るだけでも、12人以上が辞めていったのを覚えています。

ただ、そのペースは昔のほうが速かった。私が入ったころは毎日4時間残業に土曜出勤が当たり前で、その忙しさに耐えられず辞める人が何人もいました。その話は工場を辞めたいのは甘えかにも書きました。今は労働時間もだいぶ変わって、その理由で辞める人は減っています。

辞めた理由は、たぶん「工場が合わなかった」

正直に書きます。辞めた人全員に理由を聞いたわけではないので、本当のところは分かりません。それでも、見ていて共通して感じるのは、工場で働くこと自体が合わなかったのだろう、ということです。

仕事の中身がきつすぎたとか、人間関係がひどかったとか、そういう分かりやすい原因を思い出せる辞め方は、実はあまりありません。もっと根っこの、「自分は工場という場所に向いていない」という感覚。それが辞める人の背中を押していたように思います。

見送る側の本音:引き止めない

若手が辞めると言ってきたとき、私たちベテランがどう反応するか。正直に書くと、必死に引き止めたりはしません。「辞めるんか。次は何やるんだろうな」。それくらいの感覚で見送ります。

冷たいわけではありません。今は転職が普通の時代だと、私たちも分かっているからです。合わない場所で無理に踏ん張るより、動いたほうがいいこともある。「最近の若いのは根性がない」なんて、少なくとも私は思いません。

続く人の共通点は、根性ではない

35年見てきて、辞めずに続く人には共通点があります。ただしそれは、根性でも我慢強さでもありません。

ひとつは、工場の雰囲気になじめること。あの独特の空気、油のにおい、機械の音、体を動かす毎日。これが嫌でない人。もうひとつは、ものづくりが好きなこと。私が35年続いた一番の理由も、結局これです。この2つのどちらかがある人は、長く続いています。

逆に言えば、続くかどうかは入る前にある程度わかる、ということでもあります。根性で乗り切るものではなく、もともと合うか合わないか。ここが大事なところです。

だから、入る前に「合うか」を見極めてほしい

まとめます。工場勤務で続くかどうかは、根性より「合うか」で決まります。だから、入る前にできるだけ見極めてほしいんです。工場見学があるなら雰囲気を肌で感じてくる。仕事の中身を調べておく。このブログの試作と量産の違いきつい?の記事も、その材料に使ってもらえればと思って書いています。

そして、もしすでに入っていて「工場が合わないかもしれない」と感じている若い人がいたら。私が現場でかける言葉はこうです。若いうちにいろんな仕事をして、自分に合うものを見つけるのもいいと思うよ。若さは、それができる強みです。合わない場所で我慢するより、外を見てみるのも一つの選択肢です。

筆者:工業高校卒業後、1989年に自動車部品メーカーへ入社。1年間の企業内学園を経て試作課へ配属。以来、試作品の組み付けから性能測定までを担当。班長を経験したのち、管理職の道ではなくものづくりの現場に残ることを選んだ。 この記事は個人の経験にもとづくものであり、所属企業の見解ではありません。記載の内容は筆者の勤務先での一例です。 詳しくは書いている人へ。