残業ゼロの工場とパンパンの工場、どっちが幸せか。両方を経験して分かったこと
残業ゼロは、正直、楽です。でも手取りは減ります。しかも、暇な職場は長続きしません。私は「残業ゼロで定時割れの時期」と「残業でパンパンの今」の両方を経験しました。その結論から言うと、製造業では残業はあるものと思っておいたほうがいい。理由を、実体験で書きます。
私は1989年に自動車部品メーカーへ入社し、試作課に35年います。工場勤務の残業について、きれいごとではない実際を知りたい人向けの記事です。
残業ゼロで、手取りは月4〜6万円減った
まず、残業ゼロの時期の話です。仕事が減って定時で帰る日々が続いたとき、手取りは月に4万円から6万円くらい減りました。ボーナスも業績連動なので、合わせて効いてきます。
うちは妻も働いているので、なんとかなりました。でも、これが一馬力の家庭だったら、と考えるとぞっとします。残業代は「あってもなくてもいいおまけ」ではなく、生活に組み込まれた収入なんです。減って初めて、それが分かります。
楽だったが、「この暇はもたない」と不安だった
体は確かに楽でした。定時で帰れて、疲れも溜まらない。ただ、心から喜べたかというと、違います。
頭の中にずっとあったのは、「こんな暇な状態が、会社としてもつわけがない」という不安でした。いずれ希望退職の募集が出るんじゃないか、と。EV化で試作が消えた日に書いたように、仕事が減れば人が切られるのを、私は目の前で見ています。残業ゼロの裏側には、その影がちらついていました。楽さと引き換えに、安心は減っていたんです。
今は残業が戻った。給料は増え、体はきつい
今は残業が戻ってきました。給料は元通り、むしろ多いくらいです。感覚として、月に25時間以上残業すると、金銭的な安心感があります。
ただし、体は別です。体力の限界の記事にも書きましたが、50代の体には残業がこたえます。翌日に疲れが取れていない。本音を言えば、月20時間以下に抑えたい。お金の安心と体のきつさが、ちょうど綱引きになるのが今の状態です。若いころは、この綱引きすら気になりませんでした。
製造業の給料は、残業込みで組まれている
他の職業の給料をよく知らないので断言はできません。それでも35年いて分かるのは、製造業の給料は、残業代込みで一人前になるように組まれているということです。基本給だけ見ると、思ったより多くありません。残業代が乗って、やっと「まあまあ」になる。
だから残業がないと、正直きつい。救いはボーナスです。年に何ヶ月分かのまとまった額が出るので、これがあるからやっていける面はあります。ボーナスの実際はきつい?の記事に書きました。月給・残業・ボーナスの3つがセットで、製造業の家計は回っています。
今の若い子は、残業をやりたがらない
世代の違いも書いておきます。今の若い子は、意外なほど残業をやりたがりません。車を持っていない子もいるし、無茶をしない印象です。お金より自分の時間、という価値観がはっきりしています。
私たちが若いころは逆でした。車のローンを払うために、進んで残業していたようなものです。ほしいものがあって、そのために稼ぐ。今の子とは、残業の意味がまるで違います。どちらがいい悪いではなく、時代が変わったということです。
結論:残業ゼロの職場は、たぶん長続きしない
では、残業ゼロとパンパン、どっちが幸せか。難しい問いです。でも一つ、はっきり言えることがあります。
残業ゼロの職場は、たぶん長続きしません。暇な職場は「余裕がある」とみなされて、人を減らされます。すると残った人で回すことになり、結局は残業が発生する。減らされた人も、暇な職場から忙しい職場へ異動させられて、そこで残業することになります。どちらに転んでも、行き着く先は残業です。うちの会社はまさにそうでした。残業ゼロは、一時的な状態なんです。
だから、これから製造業で働く人に伝えたいのはこうです。残業はあるものと思っておいたほうがいい。「残業ゼロ」を売りにする求人があっても、それが続く保証はありません。むしろ大事なのは、残業代がちゃんと出るか、月にどれくらいの残業が前提の給料なのか。そこを面接や求人票で見ておくことです。
自分は残業してでも稼ぎたいのか、時間を優先したいのか。それによって、選ぶべき会社は変わります。働き方は人それぞれなので、自分に合う職場を探すのが一番です。今は転職も普通の時代ですから、合わないと感じたら動くのも選択肢に入れておいてください。