工場のリアル、先に言っておく 製造業に入る前に知っておきたいことを、中の人が書く

お金と待遇 2026-08-08

工場勤務に資格は必要か。35年で7つ取った私の答え

先に結論を書きます。私は35年で7つの資格を取りましたが、資格手当は1円もついていません。昇進にもほとんど関係ありませんでした。日々の仕事で本当に必要なものは、そのうち1つだけです。

私は1989年に自動車部品メーカーへ入社し、試作課に35年います。「資格を取れば手当がつく」という話をよく見かけるので、私の会社の場合はこうだった、という実際を書いておきます。

私が持っている資格を全部並べます

内訳はこうです。

このうち会社に言われて取ったのは5つです。危険物の乙4、有機溶剤作業主任者、そして技能検定の3つ。残るボイラー技士と危険物の丙種は、会社の指示で取ったものではありません。

仕事で実際に要るのは、1つだけ

7つ並べておいて何ですが、日々の作業で「これがないとできない」のは危険物乙4だけです。

残りの6つは、持っていなくても今日の仕事は回ります。技能検定は腕前の証明であって、作業の許可証ではないからです。治具を作るのにも性能測定をするのにも、検定を持っていることは条件になっていません。

工場の資格には、ないと法律的に作業できないものと、腕前を測るものの2種類があります。前者は少なく、後者が大半です。この区別を知らないまま「資格をたくさん取れば有利」と思うと、あとでがっかりします。

資格手当はつきません

はっきり書きます。うちの会社に資格手当はありません。7つ持っていても、1つも持っていない人と、その分の給料は変わりません。

求人情報で「資格手当あり」と書いてある会社を見ると、正直うらやましいと思います。ただ、製造業ならどこでも手当がつくと思っていると当てが外れます。手当の有無は会社ごとに違うので、気になる人は入る前に確認してください。給料の中身については自動車部品メーカーはきつい?正社員は割に合うのかに書きました。

それでも会社は技能検定を勧める

手当がつかないのに、会社は技能検定の取得を勧めてきます。私が取った3つも、そういう流れで受けたものです。

まったく意味がないわけではありません。取ったその年の評価は上がると思います。毎月の手当にはならないけれど、その年の評価には反映される。会社としても、有資格者が何人いるかは対外的に意味があるのだと思います。

だから「損だから受けない」とまでは言いません。ただ、給料が毎月増えると期待して受けると、話が違うことになります。

費用は受かれば戻る。練習は時間外

お金と時間の話も書いておきます。

受験費用は、受かれば会社が出してくれます。裏を返せば、落ちたら自腹です。ここはなかなかシビアなところです。

そして講習や練習は、時間外にやります。仕事が終わったあとや休みの日に練習して、本番に臨む。残業代がつくわけでもありません。技能検定は実技があるので、練習なしではまず受かりません。時間を持ち出しているという感覚は、正直あります。

昇進とは、あまり関係ない

資格をたくさん持っていると出世できるか。私の見てきた範囲では、あまり関係ありません。実務優先です。

実際に仕事ができるか、任せた仕事をきちんと仕上げるか、人とうまくやれるか。見られているのはそちらです。資格の欄が埋まっているから引き上げられた、という人を思い出せません。私自身、7つ持っていますが昇進試験は断りました

入社前に取っておく必要はない

これから工場を受ける人に言いたいのは、これです。入社前に資格を取っておく必要はありません。必要になったら、入ってからで十分間に合います。

実際、私が持っているものの多くは、会社に言われてから取りました。企業内学園のような教育の仕組みがある会社なら、なおさら心配は要りません。図面が読めなくても入社してから治るのと同じ話です。

逆に、取っておいたのに使わなかったものもあります。私の場合はボイラー技士です。取ったこと自体を後悔はしていませんが、35年の仕事の中で出番はありませんでした。資格は「持っていること」ではなく「使う場面があること」に意味があります。

だから、資格の勉強に時間を使うより、まず入って、現場で必要なものを見極めてからでいい。それが35年やってきた私の答えです。

筆者:工業高校卒業後、1989年に自動車部品メーカーへ入社。1年間の企業内学園を経て試作課へ配属。以来、試作品の組み付けから性能測定までを担当。班長を経験したのち、管理職の道ではなくものづくりの現場に残ることを選んだ。 この記事は個人の経験にもとづくものであり、所属企業の見解ではありません。資格手当や取得費用の扱いは会社によって大きく異なります。必要な資格も職場によって変わります。 詳しくは書いている人へ。